紅茶をどうぞ
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Hypocrisy
君の背中は俺が守るよ、と小さな胸を張って宣言した。
遠い遠い昔の約束。
いまでもちゃんと、覚えているよ。
その部屋に入ると、火薬独特の匂いが鼻についた。
パイプ椅子に片足を上げて座り、膝にサブマシンガンの銃身を乗せている彼の横顔は、まだ抜け切らない緊張のためか少々強張っている。
だがこちらの気配に気付いてぱっと顔を上げた時、その目はいつものように強く輝いていた。透明度の高い翡翠色の瞳はひどく静かで落ち着いている。まっすぐ射抜くように見据えられ、こちらも負けじと正面から視線を合わせた。
イギリスは薄い唇を吊り上げ不敵な笑みを刻むと、額の上をさらりと流れる金色の髪を白い指先でかき上げた。
「よぉ、アメリカ」
彼は手にした銃を机に置くと、背もたれに身体を預ける。ぎぃ、と軋んだ音がした。
ここへ来る途中に淹れてもらった紅茶のカップを差し出すと、イギリスは嬉しそうに両目を細めて、サンキュ、と短く言って受け取った。
すぐ近くの椅子を引き寄せ、アメリカもまた腰を下ろす。
「久々の共同作戦だね」
「そうだな」
「目標はもう捉えているから、あとは突入するだけ。精鋭揃いだから心配は要らないと思うよ」
「あぁ。SASとUSMCが組めばどんな任務だって完璧に遂行出来る」
無類の自信を窺わせるイギリスに、アメリカもまたくすりと笑った。
対テロ特別部隊として組織された選りすぐりの軍人達。彼らは隠密裏に特殊任務を行う、スペシャリストだ。今回の任務も間違いなく完璧にこなしてくれるだろう。
最近頻発する両国でのテロ攻撃、それらに対抗すべく表には一切公表せずに行われた今回の作戦。それも大詰めに来ていた。
Special Air Service、通称S.A.S.と呼ばれるそれは英陸軍所属の特殊部隊だ。
元はWW2中に組織された部隊だったが、様々な経緯を経て今やエリート部隊とまで呼ばれるほどになった。国内外の紛争は勿論、あらゆる場面で活躍し、アメリカは勿論各国の特殊部隊のモデルともなっている。間違いなく世界最強の集団だった。
今回の作戦はUnited States Marine Corps、通称Marinesと呼ばれるアメリカ海兵隊との共同作戦だった。アメリカにもデルタフォースやSWATなど特殊部隊はいくつかあるが、USMCは独自の航空部隊を保有するため空での軍事行動が可能であり、また出撃には議会の承認を必要とせず、大統領の命令のみで行動出来るところが最大の特徴である。
何かと横の繋がりが煩い軍内部で、独自の行動が出来るというところが強みだ。米軍を構成するうちの一番小さい軍隊ではあるが、大統領の命令のみで動かせるという事は、つまるところ、アメリカという国自身が個人的に動かせる部隊と言っても過言ではなかった。
「他国との共同戦の時は自由に動かせる小部隊の方が楽だからね」
「おまえんとこは大所帯だからな。俺はもともと少人数の出来る奴だけ動かす方が性に合ってるし」
「まるで彼らは円卓の騎士だよね。さすがはアーサー王」
「は、言ってろ」
どこかしら揶揄を含んだアメリカの物言いに、イギリスは鼻先で笑うと紅茶を一口、喉に通した。それからカップを置くと先ほど手にしていたサブマシンガンをもう一度取り上げる。
冷たい感触を楽しむように銃身をひと撫ですると、異様に鋭い眼差しをアメリカに向けて寄越した。
「お前も出るのか?」
「そりゃあね。君が行くのになんで俺が後ろでぼーっとしてなくちゃならないんだい?」
「ふぅん。まぁ足手まといにならないよう精々頑張りな」
「言ってくれるね」
ひょいと肩を竦めてアメリカは苦笑いを浮かべる。
内心ではイギリスが無茶な真似をしやしないかと非常に心配だったりするのだが、そんな表情はおくびにも出さない。止めても無駄なことなど最初から分かっているし、余計な口出しは逆上されるだけで益がない。
勿論彼の腕は信頼しているが、これまでにも共同戦線を張った時、ひやりとさせられる場面が一度や二度ではなかった。決して無鉄砲なわけではなかったが、多少の無理は承知で進もうとするところが時々ある。そしてそれはだいたい、アメリカを守るための行動がほとんどだった。
だがアメリカだってもう小さな子供なんかじゃない。背中を預けられるに足る男になったつもりだ。イギリスの背後は絶対に自分が守る、これはいつだってどんな時だって変わらない自分自身への誓い。
Marinesの隊長が影で泣いている事は知っているが、それはイギリスのところも似たようなものだし、こういう時はもはや何も言わないが吉だという事を彼らはよく熟知している。
「そう言えば、今日はMP5にしたんだ?」
イギリスが抱えるサブマシンガンは、ドイツ製の対テロ特殊部隊用の短機関銃だった。いつも彼が愛用しているアサルトライフルではない。
MP5は使用国の一番多い世界で最も有名なサブマシンガンだ。小型版やスーツケース収納型などさまざまなバリエーションが作られ、要人警護等にも使用されている優秀な銃だった。
「室内じゃやっぱこいつが使い易いからな。AKも悪くはないが、この手の銃はドイツのものが一番いい」
「って言うかAKはロシアのだから基本的に許可は下りないんじゃないのかい? いつも思うけどさ」
「許可は下りるのを待つんじゃなくて下ろすもんだろ?」
「うわぁ……」
さすが暴虐海賊紳士。
彼はいつも自分独自の銃を持ち込んでいるなと思っていたが、こういうところでもしっかりと俺様っぷりを発揮していたのか。
まぁ今回の任務はきちんとSASに支給されている銃を選んだだけでもマシなのだろう。とは言っても上着の内側には平気でトカレフなんかを忍ばせていそうだが。
「なんでそんなにロシアの銃器がいいんだか」
「だってお前、何かあった時に足がつきにくいだろ? まさかイギリスがロシアの武器を使うなんて、って意外性もあるだろうし」
「……まったく君って奴は」
「なんだよ」
微妙に突っこみづらい返答に、アメリカは呆れたように両手を挙げた。
本当になんというか、時々この人はとても子供っぽい。
イギリスはアメリカの態度に顔を赤らめて、あからさまに不機嫌な表情を浮かべた。馬鹿にされているのが分かっているのだろう、忌々しげに舌打ちまでしている。
「つか連中だってRPGぶっ放してくるかもしれねーし。お前こそ気をつけろよ?」
「さすがに屋内でロケットランチャーはないと思うけど」
「窮鼠猫を噛むってことわざ、日本にあるのを知っているか?」
「俺も君も猫みたいに可愛い動物じゃない事だけは確かだけどね」
殲滅する時は一瞬でやるよ、反撃は許さない。
そう言ってアメリカもまた壁にかけてあったM11イングラムを手にした。くるりと回して馴れた手付きで構える。
少しでも味方が傷つかないで済むのなら、武器を手にすることも辞さない覚悟。守るために戦うのだという、その考えがどれ程の矛盾をはらんでいるのか分からないわけでなかった。人類の歴史は戦いの歴史でもあるのだから、綺麗ごとを並べても綺麗に生きられない事など、とうの昔に知っている。
でも今はただ、守りたい人さえ守れれば、それで構わない。
幼い頃はイギリスがずっと自分を守ってくれていた。
傷つくのはいつもイギリスばかりで、アメリカは彼の背中に隠れてただ、響き渡る銃声に耳を塞いでいる事しか出来なかった。
あんな歯がゆい思いは二度としたくはない。
武器を取らせたくはなかったというイギリスの思いを踏みにじってまで、戦いに身を投じたあの時から、自分の手は守るためにあるのだと信じたかった。ただの殺戮ではなく、それがどんな偽善であろうとも、出来ればそうでありたいと心の底から願ったのだ。
There never was a good war, or a bad peace.
かつて、イギリスを傷つけてまで果たした独立の時。宣言文起草に携わったある男の言葉が今も深く胸に刻まれている。
言い訳は許されない、だからこそ願う。
正義のために、そして何より自分のためにと声高に叫びながら。
「ご老体なんだから無理はしないでくれよ」
「お前みたいなガキにはまだまだ負けねーよ」
「君は黙って俺の後ろにいるのが一番なんだからね!」
相変わらずアメリカは自信満々に偉そうに言ってのけた。
そんな彼を少しだけくすぐったそうに眺めてから、イギリスはそうだな、と頷く。
「まぁ無駄に横に広いから盾にはなるだろ」
「な……! そこは『お前こそ俺の後ろにいろ』とかなんとか言うところじゃないか。なんで俺の体型の話になるんだい!」
「あーもーうるせぇうるせぇこのメタボ」
「ちょっと、イギリス、君ねぇ。俺のこれは筋肉であって決して脂肪じゃ……!」
「そこまで言うなら証拠見せてみろよ」
「いいよ、脱いであげようじゃないか。君は本当にエロいな!」
「エロいって言うなぁ!!!!」
思わず顔を真っ赤にしたイギリスの叫び声が、作戦本部内に響き渡った。
この時、二人を呼びに来ていたSASとUSMCの隊長達は、中からの声に呆れた末、頭を抱えて廊下に立ち尽くしていた。
こめかみに青筋を浮かべて震え、今にも怒鳴り込みそうになりながらも、なんとか耐えている姿はとても特殊部隊を任されているエリートとは思えないほど情けない。
だが両国の親睦のためにもここはじっと耐えて我慢をしなければならないのだ。それもまた国を憂う軍人の務めである。
そう。どんなに心中で『このバカップルめが!』と思っていてもだ。
そんな事など露知らず、アメリカは怒り狂うイギリスの身体を、ぎゅうっと思い切り抱き締めていた。
守りたいから、戦うなんて。
随分とかっこいいセリフじゃないか。
ヒーローにぴったりだろう?
独善と優越に彩られたその言葉の先には、あの日君と交わした約束がひとつ。
遠い遠い昔の約束。
いまでもちゃんと、覚えているよ。
その部屋に入ると、火薬独特の匂いが鼻についた。
パイプ椅子に片足を上げて座り、膝にサブマシンガンの銃身を乗せている彼の横顔は、まだ抜け切らない緊張のためか少々強張っている。
だがこちらの気配に気付いてぱっと顔を上げた時、その目はいつものように強く輝いていた。透明度の高い翡翠色の瞳はひどく静かで落ち着いている。まっすぐ射抜くように見据えられ、こちらも負けじと正面から視線を合わせた。
イギリスは薄い唇を吊り上げ不敵な笑みを刻むと、額の上をさらりと流れる金色の髪を白い指先でかき上げた。
「よぉ、アメリカ」
彼は手にした銃を机に置くと、背もたれに身体を預ける。ぎぃ、と軋んだ音がした。
ここへ来る途中に淹れてもらった紅茶のカップを差し出すと、イギリスは嬉しそうに両目を細めて、サンキュ、と短く言って受け取った。
すぐ近くの椅子を引き寄せ、アメリカもまた腰を下ろす。
「久々の共同作戦だね」
「そうだな」
「目標はもう捉えているから、あとは突入するだけ。精鋭揃いだから心配は要らないと思うよ」
「あぁ。SASとUSMCが組めばどんな任務だって完璧に遂行出来る」
無類の自信を窺わせるイギリスに、アメリカもまたくすりと笑った。
対テロ特別部隊として組織された選りすぐりの軍人達。彼らは隠密裏に特殊任務を行う、スペシャリストだ。今回の任務も間違いなく完璧にこなしてくれるだろう。
最近頻発する両国でのテロ攻撃、それらに対抗すべく表には一切公表せずに行われた今回の作戦。それも大詰めに来ていた。
Special Air Service、通称S.A.S.と呼ばれるそれは英陸軍所属の特殊部隊だ。
元はWW2中に組織された部隊だったが、様々な経緯を経て今やエリート部隊とまで呼ばれるほどになった。国内外の紛争は勿論、あらゆる場面で活躍し、アメリカは勿論各国の特殊部隊のモデルともなっている。間違いなく世界最強の集団だった。
今回の作戦はUnited States Marine Corps、通称Marinesと呼ばれるアメリカ海兵隊との共同作戦だった。アメリカにもデルタフォースやSWATなど特殊部隊はいくつかあるが、USMCは独自の航空部隊を保有するため空での軍事行動が可能であり、また出撃には議会の承認を必要とせず、大統領の命令のみで行動出来るところが最大の特徴である。
何かと横の繋がりが煩い軍内部で、独自の行動が出来るというところが強みだ。米軍を構成するうちの一番小さい軍隊ではあるが、大統領の命令のみで動かせるという事は、つまるところ、アメリカという国自身が個人的に動かせる部隊と言っても過言ではなかった。
「他国との共同戦の時は自由に動かせる小部隊の方が楽だからね」
「おまえんとこは大所帯だからな。俺はもともと少人数の出来る奴だけ動かす方が性に合ってるし」
「まるで彼らは円卓の騎士だよね。さすがはアーサー王」
「は、言ってろ」
どこかしら揶揄を含んだアメリカの物言いに、イギリスは鼻先で笑うと紅茶を一口、喉に通した。それからカップを置くと先ほど手にしていたサブマシンガンをもう一度取り上げる。
冷たい感触を楽しむように銃身をひと撫ですると、異様に鋭い眼差しをアメリカに向けて寄越した。
「お前も出るのか?」
「そりゃあね。君が行くのになんで俺が後ろでぼーっとしてなくちゃならないんだい?」
「ふぅん。まぁ足手まといにならないよう精々頑張りな」
「言ってくれるね」
ひょいと肩を竦めてアメリカは苦笑いを浮かべる。
内心ではイギリスが無茶な真似をしやしないかと非常に心配だったりするのだが、そんな表情はおくびにも出さない。止めても無駄なことなど最初から分かっているし、余計な口出しは逆上されるだけで益がない。
勿論彼の腕は信頼しているが、これまでにも共同戦線を張った時、ひやりとさせられる場面が一度や二度ではなかった。決して無鉄砲なわけではなかったが、多少の無理は承知で進もうとするところが時々ある。そしてそれはだいたい、アメリカを守るための行動がほとんどだった。
だがアメリカだってもう小さな子供なんかじゃない。背中を預けられるに足る男になったつもりだ。イギリスの背後は絶対に自分が守る、これはいつだってどんな時だって変わらない自分自身への誓い。
Marinesの隊長が影で泣いている事は知っているが、それはイギリスのところも似たようなものだし、こういう時はもはや何も言わないが吉だという事を彼らはよく熟知している。
「そう言えば、今日はMP5にしたんだ?」
イギリスが抱えるサブマシンガンは、ドイツ製の対テロ特殊部隊用の短機関銃だった。いつも彼が愛用しているアサルトライフルではない。
MP5は使用国の一番多い世界で最も有名なサブマシンガンだ。小型版やスーツケース収納型などさまざまなバリエーションが作られ、要人警護等にも使用されている優秀な銃だった。
「室内じゃやっぱこいつが使い易いからな。AKも悪くはないが、この手の銃はドイツのものが一番いい」
「って言うかAKはロシアのだから基本的に許可は下りないんじゃないのかい? いつも思うけどさ」
「許可は下りるのを待つんじゃなくて下ろすもんだろ?」
「うわぁ……」
さすが暴虐海賊紳士。
彼はいつも自分独自の銃を持ち込んでいるなと思っていたが、こういうところでもしっかりと俺様っぷりを発揮していたのか。
まぁ今回の任務はきちんとSASに支給されている銃を選んだだけでもマシなのだろう。とは言っても上着の内側には平気でトカレフなんかを忍ばせていそうだが。
「なんでそんなにロシアの銃器がいいんだか」
「だってお前、何かあった時に足がつきにくいだろ? まさかイギリスがロシアの武器を使うなんて、って意外性もあるだろうし」
「……まったく君って奴は」
「なんだよ」
微妙に突っこみづらい返答に、アメリカは呆れたように両手を挙げた。
本当になんというか、時々この人はとても子供っぽい。
イギリスはアメリカの態度に顔を赤らめて、あからさまに不機嫌な表情を浮かべた。馬鹿にされているのが分かっているのだろう、忌々しげに舌打ちまでしている。
「つか連中だってRPGぶっ放してくるかもしれねーし。お前こそ気をつけろよ?」
「さすがに屋内でロケットランチャーはないと思うけど」
「窮鼠猫を噛むってことわざ、日本にあるのを知っているか?」
「俺も君も猫みたいに可愛い動物じゃない事だけは確かだけどね」
殲滅する時は一瞬でやるよ、反撃は許さない。
そう言ってアメリカもまた壁にかけてあったM11イングラムを手にした。くるりと回して馴れた手付きで構える。
少しでも味方が傷つかないで済むのなら、武器を手にすることも辞さない覚悟。守るために戦うのだという、その考えがどれ程の矛盾をはらんでいるのか分からないわけでなかった。人類の歴史は戦いの歴史でもあるのだから、綺麗ごとを並べても綺麗に生きられない事など、とうの昔に知っている。
でも今はただ、守りたい人さえ守れれば、それで構わない。
幼い頃はイギリスがずっと自分を守ってくれていた。
傷つくのはいつもイギリスばかりで、アメリカは彼の背中に隠れてただ、響き渡る銃声に耳を塞いでいる事しか出来なかった。
あんな歯がゆい思いは二度としたくはない。
武器を取らせたくはなかったというイギリスの思いを踏みにじってまで、戦いに身を投じたあの時から、自分の手は守るためにあるのだと信じたかった。ただの殺戮ではなく、それがどんな偽善であろうとも、出来ればそうでありたいと心の底から願ったのだ。
There never was a good war, or a bad peace.
かつて、イギリスを傷つけてまで果たした独立の時。宣言文起草に携わったある男の言葉が今も深く胸に刻まれている。
言い訳は許されない、だからこそ願う。
正義のために、そして何より自分のためにと声高に叫びながら。
「ご老体なんだから無理はしないでくれよ」
「お前みたいなガキにはまだまだ負けねーよ」
「君は黙って俺の後ろにいるのが一番なんだからね!」
相変わらずアメリカは自信満々に偉そうに言ってのけた。
そんな彼を少しだけくすぐったそうに眺めてから、イギリスはそうだな、と頷く。
「まぁ無駄に横に広いから盾にはなるだろ」
「な……! そこは『お前こそ俺の後ろにいろ』とかなんとか言うところじゃないか。なんで俺の体型の話になるんだい!」
「あーもーうるせぇうるせぇこのメタボ」
「ちょっと、イギリス、君ねぇ。俺のこれは筋肉であって決して脂肪じゃ……!」
「そこまで言うなら証拠見せてみろよ」
「いいよ、脱いであげようじゃないか。君は本当にエロいな!」
「エロいって言うなぁ!!!!」
思わず顔を真っ赤にしたイギリスの叫び声が、作戦本部内に響き渡った。
この時、二人を呼びに来ていたSASとUSMCの隊長達は、中からの声に呆れた末、頭を抱えて廊下に立ち尽くしていた。
こめかみに青筋を浮かべて震え、今にも怒鳴り込みそうになりながらも、なんとか耐えている姿はとても特殊部隊を任されているエリートとは思えないほど情けない。
だが両国の親睦のためにもここはじっと耐えて我慢をしなければならないのだ。それもまた国を憂う軍人の務めである。
そう。どんなに心中で『このバカップルめが!』と思っていてもだ。
そんな事など露知らず、アメリカは怒り狂うイギリスの身体を、ぎゅうっと思い切り抱き締めていた。
守りたいから、戦うなんて。
随分とかっこいいセリフじゃないか。
ヒーローにぴったりだろう?
独善と優越に彩られたその言葉の先には、あの日君と交わした約束がひとつ。
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