紅茶をどうぞ
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嫌いじゃない
キスをするのは嫌いじゃない。
唇と唇が重なり合って、薄く開いたそこから熱い舌が差し込まれてくる。
最初は軽く触れ合うように、それから徐々に確かめるような動きで絡まり、濡れた音を立てながら口腔をかき混ぜられた。
吐息を掠めさせては、何度も角度を変えて浅く深く繋がる。
目は、どちらかと言うと閉じているよりも開いていることの方が多い。
お互いの瞳の奥の奥、微妙な変化さえも見逃さないように見つめ合う。相手の目に自分の虹彩が映りこみ、青と緑が溶け合うその色にまるで互いで見惚れあうようだ。
伸ばした腕は相手の首に回し、抱かれた腰を引き寄せられるたびに身体が熱を帯びていく。
アメリカ、と掠れた声で呼ぶと目元が柔らかく細められる。本当に嬉しそうに笑みを浮かべながら口吻けを繰り返し、呼吸の合間に頬をすり寄せては鼻先を触れ合わせた。
後頭部の髪を長い指でまさぐられ、くすぐったさに肩を竦めると首筋に降りたそれがなだめるように肌を撫でていく。
キスをするたび、視界いっぱいに広がる顔。
随分と綺麗なものだと思った。人と違ってゆっくりと年を取り、ある程度の段階で一時的にストップしてしまう肉体の成長は、お互いを若い外見のまま保つ。
世界一の大国になった今もアメリカは他国に比べ段違いに若い。実年齢はどうあれ、眼鏡を外せばまだ幼さの残る容貌をとどめていた。
青空のように澄んだ瞳と、薄い瞼、程よい長さの睫毛。すっと通った高い鼻梁と形の良い唇。そしてさらりとした柑橘系を思わせる髪。そのどれもがこうして間近で見るとやけに鮮やかに眼を奪う。
子供の頃から整っていた容姿は、大きくなっても変わらずそこにあっていくらでも自分を惹きつける。こみ上げる想いは随分と形を変えてしまったけれど、その暖かさに変化はなかった。
「あぁもう、本当に君って……エロい顔だな」
くすっと笑ってアメリカが右頬に手のひらを這わせてきた。
濡れた唇を親指がそっと撫でていく。
「お前も大概だけどな」
「お互い様?」
「あぁ。すっげぇヤラシイ目、してる」
「君ほどじゃないけどね」
「言ってろ」
もう一度、唇を重ね合わせる。
今度は両目を閉ざしてゆっくりとその感触を追った。
ぞくぞくと肌を刺激する快楽の波はやがて脳裏をゆるくかき乱し、アルコールを摂取した時のような陶酔感を与えてくる。
「お前に酔わされるなんて、嫌だ」
「誘い文句上手だよね」
「この程度で誘われるなんて、安い奴だな」
「酩酊する君よりかはましじゃない?」
ほら、もう腰にきてる。
含み笑いを滲ませて囁いたアメリカの指に背骨から尾骶骨までをなぞられ、咄嗟に身体が揺れた。思わず相手のシャツを握って下から睨み上げると、思い切り欲情した視線が降って来た。
「がっつくな」
「そういう君こそ、もの欲しそうにしないでくれよ」
相変わらずの遣り取り、口が減らないのはお互い様。
別にそれでいい。それで構わないのだ。こういう関係も悪くないと、いつから思えるようになったのだろう。
いずれまた変化が訪れる日が来る。このまま永遠になんて信じられるほど、純粋に出来てはいない。時間は絶えず流れ行くものだし、世界も刻一刻と変化を遂げている。二人の関係もここ数百年で何度変わってきた事か。
だからずっとこのままだなんて信じちゃいない。いつかこうやって触れ合った時間を懐かしむ時が来るかもしれない。
それでも。
たぶん、今度はもっと違う形を迎えられるだろう。
「夢は醒めるから夢、なんだよな?」
「でも叶えるものだと教えてくれたのは君だよ」
「叶うものなのか?」
「当たり前じゃないか。だって俺はヒーローだし、君は俺の特別なんだから。願って叶わない夢なんてないよ」
「……おまえらしいな」
あきれるくらいまっすぐで遠慮なんか欠片もない。躊躇いなくどこまでも強く、果てなく天に両手を伸ばす。
掴み取れないものなどないとでも言うように。
―――― だから目が離せないんだ。
「面白いから最後まで付き合ってやるよ」
言ってもう一度キスをする。唇からの熱に全てを預けてしまうかのように、深く強く、そして甘く。
それにまた応えながら、アメリカは勝ち誇ったような表情で笑った。
普段は絶対に見られないような、綺麗な綺麗な笑顔だった。
あぁ。
キスをするのは嫌いじゃない。
唇と唇が重なり合って、薄く開いたそこから熱い舌が差し込まれてくる。
最初は軽く触れ合うように、それから徐々に確かめるような動きで絡まり、濡れた音を立てながら口腔をかき混ぜられた。
吐息を掠めさせては、何度も角度を変えて浅く深く繋がる。
目は、どちらかと言うと閉じているよりも開いていることの方が多い。
お互いの瞳の奥の奥、微妙な変化さえも見逃さないように見つめ合う。相手の目に自分の虹彩が映りこみ、青と緑が溶け合うその色にまるで互いで見惚れあうようだ。
伸ばした腕は相手の首に回し、抱かれた腰を引き寄せられるたびに身体が熱を帯びていく。
アメリカ、と掠れた声で呼ぶと目元が柔らかく細められる。本当に嬉しそうに笑みを浮かべながら口吻けを繰り返し、呼吸の合間に頬をすり寄せては鼻先を触れ合わせた。
後頭部の髪を長い指でまさぐられ、くすぐったさに肩を竦めると首筋に降りたそれがなだめるように肌を撫でていく。
キスをするたび、視界いっぱいに広がる顔。
随分と綺麗なものだと思った。人と違ってゆっくりと年を取り、ある程度の段階で一時的にストップしてしまう肉体の成長は、お互いを若い外見のまま保つ。
世界一の大国になった今もアメリカは他国に比べ段違いに若い。実年齢はどうあれ、眼鏡を外せばまだ幼さの残る容貌をとどめていた。
青空のように澄んだ瞳と、薄い瞼、程よい長さの睫毛。すっと通った高い鼻梁と形の良い唇。そしてさらりとした柑橘系を思わせる髪。そのどれもがこうして間近で見るとやけに鮮やかに眼を奪う。
子供の頃から整っていた容姿は、大きくなっても変わらずそこにあっていくらでも自分を惹きつける。こみ上げる想いは随分と形を変えてしまったけれど、その暖かさに変化はなかった。
「あぁもう、本当に君って……エロい顔だな」
くすっと笑ってアメリカが右頬に手のひらを這わせてきた。
濡れた唇を親指がそっと撫でていく。
「お前も大概だけどな」
「お互い様?」
「あぁ。すっげぇヤラシイ目、してる」
「君ほどじゃないけどね」
「言ってろ」
もう一度、唇を重ね合わせる。
今度は両目を閉ざしてゆっくりとその感触を追った。
ぞくぞくと肌を刺激する快楽の波はやがて脳裏をゆるくかき乱し、アルコールを摂取した時のような陶酔感を与えてくる。
「お前に酔わされるなんて、嫌だ」
「誘い文句上手だよね」
「この程度で誘われるなんて、安い奴だな」
「酩酊する君よりかはましじゃない?」
ほら、もう腰にきてる。
含み笑いを滲ませて囁いたアメリカの指に背骨から尾骶骨までをなぞられ、咄嗟に身体が揺れた。思わず相手のシャツを握って下から睨み上げると、思い切り欲情した視線が降って来た。
「がっつくな」
「そういう君こそ、もの欲しそうにしないでくれよ」
相変わらずの遣り取り、口が減らないのはお互い様。
別にそれでいい。それで構わないのだ。こういう関係も悪くないと、いつから思えるようになったのだろう。
いずれまた変化が訪れる日が来る。このまま永遠になんて信じられるほど、純粋に出来てはいない。時間は絶えず流れ行くものだし、世界も刻一刻と変化を遂げている。二人の関係もここ数百年で何度変わってきた事か。
だからずっとこのままだなんて信じちゃいない。いつかこうやって触れ合った時間を懐かしむ時が来るかもしれない。
それでも。
たぶん、今度はもっと違う形を迎えられるだろう。
「夢は醒めるから夢、なんだよな?」
「でも叶えるものだと教えてくれたのは君だよ」
「叶うものなのか?」
「当たり前じゃないか。だって俺はヒーローだし、君は俺の特別なんだから。願って叶わない夢なんてないよ」
「……おまえらしいな」
あきれるくらいまっすぐで遠慮なんか欠片もない。躊躇いなくどこまでも強く、果てなく天に両手を伸ばす。
掴み取れないものなどないとでも言うように。
―――― だから目が離せないんだ。
「面白いから最後まで付き合ってやるよ」
言ってもう一度キスをする。唇からの熱に全てを預けてしまうかのように、深く強く、そして甘く。
それにまた応えながら、アメリカは勝ち誇ったような表情で笑った。
普段は絶対に見られないような、綺麗な綺麗な笑顔だった。
あぁ。
キスをするのは嫌いじゃない。
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