紅茶をどうぞ
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
願い、そして希望 4
どれくらい時間が経ったのだろうか。
きっとほんの数分のことに違いない。だが、イギリスには随分と長く感じられた。
アメリカの指が、そっと頬に触れてくる。ためらうような仕草は彼らしくないと思った。冷たい指先の感触に知らず肩が揺れたが、抱きしめられた時も今も嫌悪感は湧かない。
至近距離で互いに見つめ合うと、そこだけは幼い頃と変わらない空色の綺麗な瞳がまっすぐこちらに向けられていた。
子供が大人になる瞬間というのはあるのだろうか。
あんなに小さかった彼が、いつの間にか自分を追い越して大人の男になっていた。
あの時は、それが急すぎてついていけなかった。
迷う心はそのまま怒りへと変わり、自分を正当化する言葉しか浮ばず、理解する心に欠けていた。
傾けた愛情の分だけ裏切りをなじり、アメリカの気持ちになど触れようともしなかった。今はただそのことだけが悔やまれる。
大事に大事に育ててきた、我が子のように大切な存在を、誰が好き好んで傷つけたいと思うだろう。
捧げた祈りはいつだって彼の幸せを願うものばかりだったはずだ。
少しも色あせることなく、こんなにも愛している。この先どんなに二人の関係が変わってしまっても、それだけは変えようのない事実。イギリスにとっての真実だった。
「夢を見るんだ。あの日から、ずっとずっと」
「イギリス……」
「どうして、俺はちゃんと笑えなかったんだろう、って。なんで祈りの言葉を口に出来なかったんだろうって、そればかり思って」
今さら何を言っても言い訳にしかならない。そんな事は分かっていた。
でも伝えたい思いはちゃんとある。
このまま喪われていってしまうにはあまりに寂しくて哀しい、大切な想い。
「俺はただ、いつでもお前には笑っていて欲しかったんだ」
はじめて出逢った時から、数え切れないほど多くの大切なものを教わった。アメリカはきっとそうは思わないに違いない。だけど、イギリスにとって大事なものは全てアメリカとの思い出の中にある。
今はもう手にすることが出来なくとも、いや、だからこそきちんと言わなければならないのだ。
傍にいてくれてありがとう。
この手を取ってくれてありがとう。
笑顔を見せてくれてありがとう。
ぬくもりを分けてくれてありがとう。
そして、愛させてくれてありがとう、と。
囁くように伝えていくと、アメリカの顔がくしゃりと歪んだ。
そのまま彼は泣きそうな表情で、もう一度イギリスを強く抱き締めてくる。
「俺も ―――― 俺も。誰よりも何よりも、愛してるよイギリス」
暖かな言葉と涙が落ちてきて。
思わず細く両目を眇めた。
自然と唇が降りてくる。
重なる瞬間にゆっくりと光を遮った。
絡み合う熱だけをただ、感じたくて。
交わした口吻けはまるで、赦しによる安らぎのように感じられた。
舌先が触れ合って、そして名残惜しそうに離れていく。
不思議と背徳ゆえの罪悪感はない。
「……これってやっぱり、近親相姦、になるのかな」
溜息混じりに唇からこぼれた言葉に、イギリスは思わず小さく笑った。アメリカの眉間に寄った皺を白い指先で撫でながら、どうだろうな、と呟く。
「でもしたかったんだ。どうしても君が欲しくて」
「お前が望むのなら、それでいいんじゃないのか」
「イギリスは?」
「嫌なら殴ってるから安心しろ」
未だ肩を抱かれたままアメリカの腕の中にいる状態で、イギリスは本当に自分達は馬鹿だなぁと思う。
もっと他に言うべき言葉があるだろうと。
言わなければならない言葉が山のように積まれているはずだと。
それなのに、触れ合った唇の熱だけで全てが溶けてしまったのだから滑稽すぎる。
あんなにも自身を苛んでいた過去の傷が、ゆるゆると消えてゆくのを感じた。
もうあの頃の二人には戻れない事など分かっている。それでも、二度と触れることは叶わないと諦めていた彼を前に、嬉しくないはずがなかった。
幼さの抜けきった、がっちりとした大人の男の腕に捕らえられている自分の姿は呆れ返るばかりだが、アメリカが望むのなら構わない。
「俺はもう君の弟ではいられないよ」
「分かっている」
「でも、小さい頃からの願いだけは変わらない……欲しいものはいつもたった一つだけだった。それだけは変えられない。この先どれだけ経っても絶対に変わらないんだ」
そう言ってアメリカは柔らかく笑みを浮かべた。
記憶の中にあるどの笑顔とも違った、深い深い笑みだった。
小さな子供ではない、守られてばかりいた少年でもない。
今のアメリカがここにはいる。
「イギリスだけが、俺の欲しいものだよ」
―――― あぁ。
また白旗を振るのは俺の方なのか。
イギリスはそう思って少しだけ憮然とする。だがあまりに嬉しそうなアメリカの顔を見ると何もかもがどうでも良くなってくるから不思議だ。
いつだって彼には敵わない。結局、その笑顔だけがイギリスを満たすことが出来るのだ。
微笑を浮かべたままのアメリカの唇に、イギリスは今度は自分から顔を寄せた。
まるでそれは誓いのキス。
あの日祈った言葉のまま、優しい優しいキスをした。
神様、どうか彼に幸せを。
きっとほんの数分のことに違いない。だが、イギリスには随分と長く感じられた。
アメリカの指が、そっと頬に触れてくる。ためらうような仕草は彼らしくないと思った。冷たい指先の感触に知らず肩が揺れたが、抱きしめられた時も今も嫌悪感は湧かない。
至近距離で互いに見つめ合うと、そこだけは幼い頃と変わらない空色の綺麗な瞳がまっすぐこちらに向けられていた。
子供が大人になる瞬間というのはあるのだろうか。
あんなに小さかった彼が、いつの間にか自分を追い越して大人の男になっていた。
あの時は、それが急すぎてついていけなかった。
迷う心はそのまま怒りへと変わり、自分を正当化する言葉しか浮ばず、理解する心に欠けていた。
傾けた愛情の分だけ裏切りをなじり、アメリカの気持ちになど触れようともしなかった。今はただそのことだけが悔やまれる。
大事に大事に育ててきた、我が子のように大切な存在を、誰が好き好んで傷つけたいと思うだろう。
捧げた祈りはいつだって彼の幸せを願うものばかりだったはずだ。
少しも色あせることなく、こんなにも愛している。この先どんなに二人の関係が変わってしまっても、それだけは変えようのない事実。イギリスにとっての真実だった。
「夢を見るんだ。あの日から、ずっとずっと」
「イギリス……」
「どうして、俺はちゃんと笑えなかったんだろう、って。なんで祈りの言葉を口に出来なかったんだろうって、そればかり思って」
今さら何を言っても言い訳にしかならない。そんな事は分かっていた。
でも伝えたい思いはちゃんとある。
このまま喪われていってしまうにはあまりに寂しくて哀しい、大切な想い。
「俺はただ、いつでもお前には笑っていて欲しかったんだ」
はじめて出逢った時から、数え切れないほど多くの大切なものを教わった。アメリカはきっとそうは思わないに違いない。だけど、イギリスにとって大事なものは全てアメリカとの思い出の中にある。
今はもう手にすることが出来なくとも、いや、だからこそきちんと言わなければならないのだ。
傍にいてくれてありがとう。
この手を取ってくれてありがとう。
笑顔を見せてくれてありがとう。
ぬくもりを分けてくれてありがとう。
そして、愛させてくれてありがとう、と。
囁くように伝えていくと、アメリカの顔がくしゃりと歪んだ。
そのまま彼は泣きそうな表情で、もう一度イギリスを強く抱き締めてくる。
「俺も ―――― 俺も。誰よりも何よりも、愛してるよイギリス」
暖かな言葉と涙が落ちてきて。
思わず細く両目を眇めた。
自然と唇が降りてくる。
重なる瞬間にゆっくりと光を遮った。
絡み合う熱だけをただ、感じたくて。
交わした口吻けはまるで、赦しによる安らぎのように感じられた。
舌先が触れ合って、そして名残惜しそうに離れていく。
不思議と背徳ゆえの罪悪感はない。
「……これってやっぱり、近親相姦、になるのかな」
溜息混じりに唇からこぼれた言葉に、イギリスは思わず小さく笑った。アメリカの眉間に寄った皺を白い指先で撫でながら、どうだろうな、と呟く。
「でもしたかったんだ。どうしても君が欲しくて」
「お前が望むのなら、それでいいんじゃないのか」
「イギリスは?」
「嫌なら殴ってるから安心しろ」
未だ肩を抱かれたままアメリカの腕の中にいる状態で、イギリスは本当に自分達は馬鹿だなぁと思う。
もっと他に言うべき言葉があるだろうと。
言わなければならない言葉が山のように積まれているはずだと。
それなのに、触れ合った唇の熱だけで全てが溶けてしまったのだから滑稽すぎる。
あんなにも自身を苛んでいた過去の傷が、ゆるゆると消えてゆくのを感じた。
もうあの頃の二人には戻れない事など分かっている。それでも、二度と触れることは叶わないと諦めていた彼を前に、嬉しくないはずがなかった。
幼さの抜けきった、がっちりとした大人の男の腕に捕らえられている自分の姿は呆れ返るばかりだが、アメリカが望むのなら構わない。
「俺はもう君の弟ではいられないよ」
「分かっている」
「でも、小さい頃からの願いだけは変わらない……欲しいものはいつもたった一つだけだった。それだけは変えられない。この先どれだけ経っても絶対に変わらないんだ」
そう言ってアメリカは柔らかく笑みを浮かべた。
記憶の中にあるどの笑顔とも違った、深い深い笑みだった。
小さな子供ではない、守られてばかりいた少年でもない。
今のアメリカがここにはいる。
「イギリスだけが、俺の欲しいものだよ」
―――― あぁ。
また白旗を振るのは俺の方なのか。
イギリスはそう思って少しだけ憮然とする。だがあまりに嬉しそうなアメリカの顔を見ると何もかもがどうでも良くなってくるから不思議だ。
いつだって彼には敵わない。結局、その笑顔だけがイギリスを満たすことが出来るのだ。
微笑を浮かべたままのアメリカの唇に、イギリスは今度は自分から顔を寄せた。
まるでそれは誓いのキス。
あの日祈った言葉のまま、優しい優しいキスをした。
神様、どうか彼に幸せを。
PR