紅茶をどうぞ
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[祭] A slow day 1
日本から誕生日プレゼントをもらった。
自国の大人気キャラクターの封筒に入ったそれは、彼の国でも一大展開を見せているディズニー・リゾートへのペア招待券だった。
一年間有効ということなので、しばらくゆっくりと休みが取れるまで机の中に入れっぱなしだったが、ようやく仕事の目途もついてなんとか日本行きが叶いそうなのでさっそく使わせてもらうことにした。
誘う相手はもうとっくに決まっている。日本もそのつもりでこれを寄越したに違いない。彼は妙に敏いから、アメリカが誰に声を掛けるかなどもうとっくにお見通しのことだろう。
イギリスは、アメリカが直接誘いを持ちかけて断ることは滅多になかった。よほどきついスケジュールでもない限り、彼はたいていどこへでも付き合ってくれる。
しかもディズニー・リゾートは前々から行きたいと言っていた場所なので、きっと二つ返事でOKを貰えるはずだ。
こっそりと調べてみた彼のその日の予定は残念ながら休日とはいかなかったが、特別に重要な会議などはないらしく、急遽休みを取ったとしても大丈夫そうなのが幸いした。
せっかくタダなのだから、美味しいものをいっぱい食べて、アトラクションでめいっぱい遊んで、夜はゆっくりと高級ホテルで過ごしたい。
そして今まで内に秘めてずっとずっと言えなかった一言を、この期に乗じて彼に伝えたいと思う。
アメリカはきゅっとこぶしを握って決意を固めると、ロンドンのイギリスの自宅へと電話をかけるため受話器を取った。
当日は見事なほどの晴天で、二人して送迎車の後部座席に乗り込みながら、成田から舞浜までの時間をあらかじめ貰っておいたパンフレットを開いて、どのような順番で回ろうかと計画を立てることに費やした。
まず先にランドに行き、午後からシーへと移動することにする。全部を見ることは物理的に不可能なので、お互いの希望箇所だけをマップにチェックしていった。
「ここと、ここ、あとこれは外せないんじゃないかな!」
「そうだな。こっちもいいんじゃねーか?」
「あ、そうだね。そこも行こう!」
そうやっていろいろと行動順を決めていると、車はいつしか滑るように東京ディズニーリゾートの敷地内へと入っていった。
どこか南国を思わせる沿岸道や、お馴染みのミッキーマウス型の装飾の数々。そのまま駐車場へと乗り入れれば、賑やかな音楽が耳に届き否がおうにも気分が盛り上がるのを感じた。
「さぁ行こうよイギリス!」
「あ、あぁ…」
腕を引っ張って急かせば、やれやれと溜息をつきつつも大人しくイギリスは従い、入口を目指して足早に歩みを進める。
事前チケットはカウンターでフリーパスに交換だ。
「それにしてもお前、男二人でアミューズメントパークって、ちょっと寂しくないか?」
「そうかな? 俺は別に気にならないぞ! 君は何か問題でも?」
「いや……せっかくのペアチケット、俺なんかに使ってもいいのかと思って」
「なんだ、そんなことを気にしていたのかい? 今更過ぎる上にどうでもいい話じゃないか!」
まったくイギリスの思考回路はネガティブで困る。
こんな絶好のレジャー日和につまらないことを考えて、気分を盛り下げるのはやめて欲しいものだ。そう思ってアメリカはイギリスの背中を勢いよく叩く。
そしてつんのめる彼に、「君は本当に軟弱だな!」という言葉も忘れずに付け加えながら、夢の国へと一歩を踏み出すのだった。
時間指定なしの特別なファストパスを使い効率良くアトラクションを楽しみながらも、そろそろ昼すぎともなればお腹もすいてくる。途中でポップコーンやら何やらをつまんでいたが、ちゃんと座れるところで休息を取りたいというイギリスの言葉を受けて、二人はファンタジーランドにある「不思議の国のアリス」をモチーフにしたレストランを目指した。もちろんイギリスたっての希望である。
「クィーン・オブ・ハートのパンケットホール」と名前のついた店内は、これでもかというほど思いっきりアリスの世界を形作っている。メニューもハート型のものばかりで、とくにロティサリーオーブンでじっくり焼き上げたチキンがオススメだそうだ。
「肉までハート型かぁ。すげえな」
「こういうこだわりが日本らしいよね」
そう言いながらそのハートにナイフを入れようとすれば、イギリスが冗談で「まるでブロークンハートだな」などと呟くものだから、なんとも言えない気持ちになってしまう。言うに事欠いてそれか。
まったくこの人は自分の方こそ空気が読めないんじゃないかと、アメリカは溜息混じりにそう思った。
「君ねぇ、笑えないジョークはいい加減にしなよ」
「う、うるせぇ」
憮然としてながらも口元に笑みを浮かべ、イギリスは楽しそうにシーフードフライを切り分ける。そんな彼を眺めながらアメリカもそれ以上まぜっかえすことはなく食事を続けた。
昼食後はディズニーリゾートラインに乗りお隣のシーへと移動する。乗り込んだ電車は外も中もこれでもかというほどミッキーマウス一色だ。
入口の巨大な地球儀の前で記念撮影。もちろんちょうど大西洋が真ん中に来たのを狙ってパチリと撮った。こうやれば北米大陸と欧州は隣同士である。
そんなアメリカの下らないこだわりに気付かないまま、イギリスは早速園内へと足を踏みいれ、目の前に広がる『海』と『山』を見てすっかり驚いているようだった。スケールは小さいけれど精巧な造りは、すっきりとまとまっていていかにも日本らしく箱庭的だと思う。
「南ヨーロッパの港町風なんだってさ」
「ふーん、そうなのか」
「こっちから周って行こうよ」
そのまま二人して入口から右手の方向へと歩いて行く。ちょうど一周して夕食は古きよき時代のアメリカを模したという、ウォーターフロントでとるつもりだ。
そこに『停泊中』のS.S.コロンビア・ダイニングルームを予約してある。
ちなみにナンタケットの町並みを再現、とのことなのでつい「本物はもっと美しいんだぞ!」と余計な一言を言ってしまえば、日本はおもむろにアメリカの前髪をひっ掴んだのち、にっこりと笑ってしばらく口を聞いてくれなくなったという苦い思い出がある。
どうやら、なんでも正直に口にするのはいろいろと問題があるらしい。
回りたいところは回って、乗りたいものは乗って、見たいものは見た。
そうやって日が暮れるまで遊びほうけたのち、夕食を済ませた二人はいよいよ本日のメイン、ディズニーホテルへと移動することになった。
「泊まる所はホテルミラコスタだっけ?」
「うん。屋内プールもあるし、夜もめいっぱい遊べるね」
「や、もう部屋でゆっくりしたい」
「なんだい、もう疲れたのかい? 年寄りはこれだから困るなぁ」
はははと笑いながらムッとするイギリスを伴い、足早にホテルのエントランスに向かえば、そこはテーマパークさながらのキャラクターアイテムに囲まれていた。
日本人はアメリカ人と同じくらいミッキーマウスが大好きだという。そしてディズニーランドやディズニーシーでのサービスの徹底振りは世界でも類を見ないほどであり、またアトラクションなどもここだけにしかないものが結構あるそうだ。
そもそも海をテーマにしたテーマパークがあるのも日本だけなのだから、日本人のディズニー好きがよく分かるものと言えるだろう。
「そうだ、部屋から水上ショーが見られるみたいだよ」
「へぇ。日本のことだからいい部屋用意してくれてんだろうなぁ。今度礼しないと」
「俺の誕生日プレゼントなんだから君が気にすることはないぞ!」
「まぁな」
肩をすくめて小さく笑うイギリスに、本当にこの人はお節介だなぁと思いつつも彼らしい態度をなんだかくすぐったく感じてしまう。子ども扱いされるのは嫌だが、こんなふうに気にかけてもらえるのは、それはそれで嬉しいものだ。
フロントでキーを受け取ると、アメリカはイギリスと共に予約してある部屋へと入っていった。
あらかじめチェックインは済んでいるので面倒な手続きは一切なし。実はアメリカはイギリスと合流する前にすでにこちらに来ており、送った荷物の確認などは全部終わらせてしまっていた。少しでも長くイギリスと自由な時間を過ごす為だったが、冷静になって考えてみれば我ながら恥ずかしいことこの上ない。
どれだけ自分はこの日を楽しみにしていたのだろうか。
こうやって仕事もなくただ遊びにだけ一日を使うのは、立場ある身としては贅沢なことだと思う。最近はすっかり日常生活が慌しく忙しく、充実した毎日はそれだけで満足感を与えては来るが、やはりプライベートでの息抜きも必要だと思っていた。
ともすれば根を詰めやすいイギリスをどうやって国外に引っ張り出すかに頭を悩ませたものだが、まぁ上手い具合に事は運んだのだから結果オーライ。
今はただ、この素敵な空間を二人で満喫することだけを考えれば良かった。
自国の大人気キャラクターの封筒に入ったそれは、彼の国でも一大展開を見せているディズニー・リゾートへのペア招待券だった。
一年間有効ということなので、しばらくゆっくりと休みが取れるまで机の中に入れっぱなしだったが、ようやく仕事の目途もついてなんとか日本行きが叶いそうなのでさっそく使わせてもらうことにした。
誘う相手はもうとっくに決まっている。日本もそのつもりでこれを寄越したに違いない。彼は妙に敏いから、アメリカが誰に声を掛けるかなどもうとっくにお見通しのことだろう。
イギリスは、アメリカが直接誘いを持ちかけて断ることは滅多になかった。よほどきついスケジュールでもない限り、彼はたいていどこへでも付き合ってくれる。
しかもディズニー・リゾートは前々から行きたいと言っていた場所なので、きっと二つ返事でOKを貰えるはずだ。
こっそりと調べてみた彼のその日の予定は残念ながら休日とはいかなかったが、特別に重要な会議などはないらしく、急遽休みを取ったとしても大丈夫そうなのが幸いした。
せっかくタダなのだから、美味しいものをいっぱい食べて、アトラクションでめいっぱい遊んで、夜はゆっくりと高級ホテルで過ごしたい。
そして今まで内に秘めてずっとずっと言えなかった一言を、この期に乗じて彼に伝えたいと思う。
アメリカはきゅっとこぶしを握って決意を固めると、ロンドンのイギリスの自宅へと電話をかけるため受話器を取った。
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当日は見事なほどの晴天で、二人して送迎車の後部座席に乗り込みながら、成田から舞浜までの時間をあらかじめ貰っておいたパンフレットを開いて、どのような順番で回ろうかと計画を立てることに費やした。
まず先にランドに行き、午後からシーへと移動することにする。全部を見ることは物理的に不可能なので、お互いの希望箇所だけをマップにチェックしていった。
「ここと、ここ、あとこれは外せないんじゃないかな!」
「そうだな。こっちもいいんじゃねーか?」
「あ、そうだね。そこも行こう!」
そうやっていろいろと行動順を決めていると、車はいつしか滑るように東京ディズニーリゾートの敷地内へと入っていった。
どこか南国を思わせる沿岸道や、お馴染みのミッキーマウス型の装飾の数々。そのまま駐車場へと乗り入れれば、賑やかな音楽が耳に届き否がおうにも気分が盛り上がるのを感じた。
「さぁ行こうよイギリス!」
「あ、あぁ…」
腕を引っ張って急かせば、やれやれと溜息をつきつつも大人しくイギリスは従い、入口を目指して足早に歩みを進める。
事前チケットはカウンターでフリーパスに交換だ。
「それにしてもお前、男二人でアミューズメントパークって、ちょっと寂しくないか?」
「そうかな? 俺は別に気にならないぞ! 君は何か問題でも?」
「いや……せっかくのペアチケット、俺なんかに使ってもいいのかと思って」
「なんだ、そんなことを気にしていたのかい? 今更過ぎる上にどうでもいい話じゃないか!」
まったくイギリスの思考回路はネガティブで困る。
こんな絶好のレジャー日和につまらないことを考えて、気分を盛り下げるのはやめて欲しいものだ。そう思ってアメリカはイギリスの背中を勢いよく叩く。
そしてつんのめる彼に、「君は本当に軟弱だな!」という言葉も忘れずに付け加えながら、夢の国へと一歩を踏み出すのだった。
時間指定なしの特別なファストパスを使い効率良くアトラクションを楽しみながらも、そろそろ昼すぎともなればお腹もすいてくる。途中でポップコーンやら何やらをつまんでいたが、ちゃんと座れるところで休息を取りたいというイギリスの言葉を受けて、二人はファンタジーランドにある「不思議の国のアリス」をモチーフにしたレストランを目指した。もちろんイギリスたっての希望である。
「クィーン・オブ・ハートのパンケットホール」と名前のついた店内は、これでもかというほど思いっきりアリスの世界を形作っている。メニューもハート型のものばかりで、とくにロティサリーオーブンでじっくり焼き上げたチキンがオススメだそうだ。
「肉までハート型かぁ。すげえな」
「こういうこだわりが日本らしいよね」
そう言いながらそのハートにナイフを入れようとすれば、イギリスが冗談で「まるでブロークンハートだな」などと呟くものだから、なんとも言えない気持ちになってしまう。言うに事欠いてそれか。
まったくこの人は自分の方こそ空気が読めないんじゃないかと、アメリカは溜息混じりにそう思った。
「君ねぇ、笑えないジョークはいい加減にしなよ」
「う、うるせぇ」
憮然としてながらも口元に笑みを浮かべ、イギリスは楽しそうにシーフードフライを切り分ける。そんな彼を眺めながらアメリカもそれ以上まぜっかえすことはなく食事を続けた。
昼食後はディズニーリゾートラインに乗りお隣のシーへと移動する。乗り込んだ電車は外も中もこれでもかというほどミッキーマウス一色だ。
入口の巨大な地球儀の前で記念撮影。もちろんちょうど大西洋が真ん中に来たのを狙ってパチリと撮った。こうやれば北米大陸と欧州は隣同士である。
そんなアメリカの下らないこだわりに気付かないまま、イギリスは早速園内へと足を踏みいれ、目の前に広がる『海』と『山』を見てすっかり驚いているようだった。スケールは小さいけれど精巧な造りは、すっきりとまとまっていていかにも日本らしく箱庭的だと思う。
「南ヨーロッパの港町風なんだってさ」
「ふーん、そうなのか」
「こっちから周って行こうよ」
そのまま二人して入口から右手の方向へと歩いて行く。ちょうど一周して夕食は古きよき時代のアメリカを模したという、ウォーターフロントでとるつもりだ。
そこに『停泊中』のS.S.コロンビア・ダイニングルームを予約してある。
ちなみにナンタケットの町並みを再現、とのことなのでつい「本物はもっと美しいんだぞ!」と余計な一言を言ってしまえば、日本はおもむろにアメリカの前髪をひっ掴んだのち、にっこりと笑ってしばらく口を聞いてくれなくなったという苦い思い出がある。
どうやら、なんでも正直に口にするのはいろいろと問題があるらしい。
* * * * *
回りたいところは回って、乗りたいものは乗って、見たいものは見た。
そうやって日が暮れるまで遊びほうけたのち、夕食を済ませた二人はいよいよ本日のメイン、ディズニーホテルへと移動することになった。
「泊まる所はホテルミラコスタだっけ?」
「うん。屋内プールもあるし、夜もめいっぱい遊べるね」
「や、もう部屋でゆっくりしたい」
「なんだい、もう疲れたのかい? 年寄りはこれだから困るなぁ」
はははと笑いながらムッとするイギリスを伴い、足早にホテルのエントランスに向かえば、そこはテーマパークさながらのキャラクターアイテムに囲まれていた。
日本人はアメリカ人と同じくらいミッキーマウスが大好きだという。そしてディズニーランドやディズニーシーでのサービスの徹底振りは世界でも類を見ないほどであり、またアトラクションなどもここだけにしかないものが結構あるそうだ。
そもそも海をテーマにしたテーマパークがあるのも日本だけなのだから、日本人のディズニー好きがよく分かるものと言えるだろう。
「そうだ、部屋から水上ショーが見られるみたいだよ」
「へぇ。日本のことだからいい部屋用意してくれてんだろうなぁ。今度礼しないと」
「俺の誕生日プレゼントなんだから君が気にすることはないぞ!」
「まぁな」
肩をすくめて小さく笑うイギリスに、本当にこの人はお節介だなぁと思いつつも彼らしい態度をなんだかくすぐったく感じてしまう。子ども扱いされるのは嫌だが、こんなふうに気にかけてもらえるのは、それはそれで嬉しいものだ。
フロントでキーを受け取ると、アメリカはイギリスと共に予約してある部屋へと入っていった。
あらかじめチェックインは済んでいるので面倒な手続きは一切なし。実はアメリカはイギリスと合流する前にすでにこちらに来ており、送った荷物の確認などは全部終わらせてしまっていた。少しでも長くイギリスと自由な時間を過ごす為だったが、冷静になって考えてみれば我ながら恥ずかしいことこの上ない。
どれだけ自分はこの日を楽しみにしていたのだろうか。
こうやって仕事もなくただ遊びにだけ一日を使うのは、立場ある身としては贅沢なことだと思う。最近はすっかり日常生活が慌しく忙しく、充実した毎日はそれだけで満足感を与えては来るが、やはりプライベートでの息抜きも必要だと思っていた。
ともすれば根を詰めやすいイギリスをどうやって国外に引っ張り出すかに頭を悩ませたものだが、まぁ上手い具合に事は運んだのだから結果オーライ。
今はただ、この素敵な空間を二人で満喫することだけを考えれば良かった。
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