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 紅茶をどうぞ
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不思議の国の
 英国というところは少々風変わりなところだ。

 そう言えば、きっとフランスあたりから「お前のところもたいがいどうかと思うけどな」と言われてしまうだろうけど、やっぱりあの島はちょっと変だと思う。


 たいていいつも雨が降っているし。
 ロンドンはつねに霧に包まれているし。
 薄暗い路地裏には切り裂き魔が現れるって話だし。
 有名なあの塔には幽霊が出るって言うし。
 庭園には妖精なんかも出ちゃうみたいだし。
 森でユニコーンと戯れるなんて妄想もいいところだ。

 食事もまずい。
 これもまたフランスあたりに言わせれば「お前も(以下略)」って言われてしまうんだろうけど、とにかく調理をするという気がないんだ、あの島国は。
 面倒臭がってパスタを水から茹でるせいで、日本のところのウドンのようになってしまって(ウドンは美味しい)、イタリアが大泣きしていたのを見たことがあったな。
 煮込み料理も野菜が原形をとどめないくらい煮詰めてしまうし、オーブンを使えば必ず真っ黒に焦がしてしまう。
 サンドウィッチを作ればキューカンバー一色の水っぽいものだし。
 それになによりあのスパム!
 嫌がらせメールの代名詞にもなった、スパム。スパム。スパム! 思わずモンティ・パイソンのように連呼してしまうよ。
 
 開発する兵器もおかしなものが多い。
 どういう思考があればそこに辿りつくんだろうというものばかりで、使い辛さは天下一品。時折国民総出でマゾヒストなんじゃないだろうかと思うよ。
 だって回転式のロケット爆弾なんてさ、いかにも自滅するのが目に見えているじゃないか。
 それに恐らく戦闘機にキノコが生えたなんて前代未聞の珍事を起こしたのも、世界中でこの国だけに決まっている。

 酒乱だし、エロいし、すぐ裸になるし。
 それでいてストイックに三つ揃えのネクタイ姿で、えげつない外交を決めてくる。
 古臭いことを伝統としていて、そのくせ老大国と言うと怒るしさ。
 ヨーロッパでは「変態紳士」なんて呼び名がついているのも頷けるね。





 でもまぁ英国にだって、いいところはいっぱいあるんだよ。
 一応。

 時々晴れ渡る空はとても澄んでいて綺麗だし。
 霧に霞むロンドン塔はすごく幻想的だし。
 バラの咲き乱れる庭園は散歩をするといい香りがするし。
 コッツウォルズや湖水地方の緑豊かな風景は、どこか懐かしくて大好きだ。

 美味しい物だって勿論、ないこともない。
 フィッシュ&チップスは揚げすぎていなければエールとの相性抜群だし、プティングだって砂糖の塊が偏っていなければそこそこいける。
 スコーンだってそうだ、手作りの特製ジャムをつけると何個だって食べられるよ。ブレックファーストのベーコンエッグだっていい。
 それに、間違いなく紅茶は絶品なんだよね!(これは世界一だって認めてあげる)
 
 変態兵器の数々だってそう。
 おかしなものが多いけど、それでもバトルオブブリテンでこの地を救った英雄、スピットファイヤの勇姿は忘れられない。
 今でも空襲時のスツーカの音が耳について離れないらしいけど(そして忌々しい事にそれはロシアも同じらしい)、戦火をくぐり抜け、彼を守り抜いてきたそれらを俺はちゃんと尊敬している。
 ありがとう、って。

 酒乱なのも今更だし、エロいのもすぐ裸になるのも俺の前でなら歓迎さ!
 スーツ姿のストイックさだって、その下にひそむ痴態を思えば……おっとこれだと俺の方が変態になってしまうね。





 まぁ、総じてこの国は変なんだ。
 風変わりで、古臭くて、幻覚ばかり見ているんだから。
 でもほら、お年よりは大切にしなきゃ駄目だって言うだろう?
 だから今日も俺はアフタヌーンティーに来てあげるんだ。「呼んでねぇよ」という紳士にあるまじき口汚い言葉を投げつけられても、空気なんて読む気ないからちっとも気にはならないぞ。

 時々、独特のアルカイックスマイルで、「アメリカさんて本当にイギリスさんのこと、お詳しいんですねぇ」なんて日本が言う。
 ふふ、おかしいね。そんなの当たり前じゃないか。
 だから俺は堂々と胸を張って答えるんだ。


「だって俺は、彼のヒーローだからね!」って。
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