紅茶をどうぞ
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4. 君が一秒でも、長く笑ってられると良いな (仏)
あぁ今日もまた、イギリスはご機嫌斜めのようだ。
ムスっとした表情を隠しもしないで、それなりに整った顔を歪めて、こいつはいつも仏頂面ばかり。
ちったあ可愛く笑って見せろと思うけれど、いつだって悪態つくのを止めやしない。
アメリカの前では時々優しく顔を綻ばせたり、日本の前じゃ始終デレデレしっぱなしだと言うのに、俺の前じゃ笑顔一つ見せやしねえ。
それでもこうして時々ティータイムに合わせて訪ねて行けば、ひとしきりの文句のあと慣れた様子で手入れの生き届いたサンルームに招き入れてくれる。そしてこればかりはとびきり美味い紅茶を淹れてくれるんだよな。
まぁ付き合いだけは無駄に長いから、嫌なこともいいことも、山のように知っている。
イギリスとは散々戦争を繰り返したし、共同戦線も張って来たし、傍観よろしく高みの見物を決め込んだり、本当にいろんな時代を過ごして来た。
隣同士なものだから文化交流も盛んだったし、政治も経済も背中合わせのようなもので、いわゆるお互い何でも知っている間柄ってやつだろう。
だから俺はあいつの気持ちは手に取るように分かるし、あいつも俺の気持ちが嫌ってほど分かるはずだ。何が気に入らないだとか、何が嬉しいだとか、何がムカつくだとか、何が楽しいだとか。そういうのは数え上げたらキリないほどお互い良く知り尽くしている。
たとえば、今こうしてこいつは不機嫌な顔でお得意の紅茶を淹れているが、その茶葉がハロッズでも滅多に入荷しないすごくいいもので、彼が一番気に入っているものだとすぐに気が付くのも俺だけだ。
ティーカップもティーポットも、銀色の磨き上げられたスプーンも彼の敬愛する女王陛下からのプレゼントだって事も俺はちゃんと知っている。そしてテーブルの中央を彩る瑞々しいピンクの薔薇、これは俺のところから贈られたモダンローズの改良版だってこともお見通しだ。
こういう茶の席では、こいつはこうして不本意な顔をしながらも妥協なしにちゃんともてなしてくれる。でも決して笑わない。イギリスが楽しそうに笑った顔なんて、第三者に向けられたものしか拝んだためしがなかった。
別にそれでいいと思う。こいつも俺も、お互い知りすぎてしまっていて今更関係を変えることなんて出来やしない。
俺はイギリスが(謀略ではなく心の底からの)満面の笑みで笑い掛けて来たら、きっとその翌日には地球がぶっ壊れてなくなるだろうと思っているし、俺が彼に……そう、たとえばアモーレの国らしく「愛している」なんて囁こうものなら、その場で眉間を撃ち抜かれるだろうことも分かっている。あいつの腕前は正確無比だからな。
だから俺達はこの先もこのままでいいし、これ以上は求めていないし、俺の手でイギリスを変えてやろうだなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
ただ。
不器用でどうしようもなく臆病な、それでいて馬鹿みたいにプライドの高いこの男の、泣き顔ばかりはもう見たくはない。
地面に膝をついて俯いて、ただ茫然と泣き崩れたあの姿だけは、もう二度と見たくはないと思っている。
そのためなら、俺は平和を愛するし、アホな兄弟喧嘩にも付き合ってやるし、こうやって寂しいこいつの為にお茶会にも参加してやってもいいんだ。
笑ってくれなくてもいい、ただ、泣かないでいてくれればそれでいい。
時代は移り変わって、こうやって毎日のんびり平和に暮らしていると、激動のあの頃が遠く過去のものになっていくのを感じる。
でも俺と違ってイギリスはものすごく執念深い性格をしているから、きっとずっと忘れることも出来ずに抱え込んでいってしまうだろう。
だから俺は、昔馴染みであり隣国の誼で少しだけ願ってやるんだ。
俺の前でなくとも、イギリスが誰かの前で、一秒でも長く笑ってられると良いなって。
そう、祈ってやるんだ。
なぁ、俺って本当にいい男だろ?
ムスっとした表情を隠しもしないで、それなりに整った顔を歪めて、こいつはいつも仏頂面ばかり。
ちったあ可愛く笑って見せろと思うけれど、いつだって悪態つくのを止めやしない。
アメリカの前では時々優しく顔を綻ばせたり、日本の前じゃ始終デレデレしっぱなしだと言うのに、俺の前じゃ笑顔一つ見せやしねえ。
それでもこうして時々ティータイムに合わせて訪ねて行けば、ひとしきりの文句のあと慣れた様子で手入れの生き届いたサンルームに招き入れてくれる。そしてこればかりはとびきり美味い紅茶を淹れてくれるんだよな。
まぁ付き合いだけは無駄に長いから、嫌なこともいいことも、山のように知っている。
イギリスとは散々戦争を繰り返したし、共同戦線も張って来たし、傍観よろしく高みの見物を決め込んだり、本当にいろんな時代を過ごして来た。
隣同士なものだから文化交流も盛んだったし、政治も経済も背中合わせのようなもので、いわゆるお互い何でも知っている間柄ってやつだろう。
だから俺はあいつの気持ちは手に取るように分かるし、あいつも俺の気持ちが嫌ってほど分かるはずだ。何が気に入らないだとか、何が嬉しいだとか、何がムカつくだとか、何が楽しいだとか。そういうのは数え上げたらキリないほどお互い良く知り尽くしている。
たとえば、今こうしてこいつは不機嫌な顔でお得意の紅茶を淹れているが、その茶葉がハロッズでも滅多に入荷しないすごくいいもので、彼が一番気に入っているものだとすぐに気が付くのも俺だけだ。
ティーカップもティーポットも、銀色の磨き上げられたスプーンも彼の敬愛する女王陛下からのプレゼントだって事も俺はちゃんと知っている。そしてテーブルの中央を彩る瑞々しいピンクの薔薇、これは俺のところから贈られたモダンローズの改良版だってこともお見通しだ。
こういう茶の席では、こいつはこうして不本意な顔をしながらも妥協なしにちゃんともてなしてくれる。でも決して笑わない。イギリスが楽しそうに笑った顔なんて、第三者に向けられたものしか拝んだためしがなかった。
別にそれでいいと思う。こいつも俺も、お互い知りすぎてしまっていて今更関係を変えることなんて出来やしない。
俺はイギリスが(謀略ではなく心の底からの)満面の笑みで笑い掛けて来たら、きっとその翌日には地球がぶっ壊れてなくなるだろうと思っているし、俺が彼に……そう、たとえばアモーレの国らしく「愛している」なんて囁こうものなら、その場で眉間を撃ち抜かれるだろうことも分かっている。あいつの腕前は正確無比だからな。
だから俺達はこの先もこのままでいいし、これ以上は求めていないし、俺の手でイギリスを変えてやろうだなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
ただ。
不器用でどうしようもなく臆病な、それでいて馬鹿みたいにプライドの高いこの男の、泣き顔ばかりはもう見たくはない。
地面に膝をついて俯いて、ただ茫然と泣き崩れたあの姿だけは、もう二度と見たくはないと思っている。
そのためなら、俺は平和を愛するし、アホな兄弟喧嘩にも付き合ってやるし、こうやって寂しいこいつの為にお茶会にも参加してやってもいいんだ。
笑ってくれなくてもいい、ただ、泣かないでいてくれればそれでいい。
時代は移り変わって、こうやって毎日のんびり平和に暮らしていると、激動のあの頃が遠く過去のものになっていくのを感じる。
でも俺と違ってイギリスはものすごく執念深い性格をしているから、きっとずっと忘れることも出来ずに抱え込んでいってしまうだろう。
だから俺は、昔馴染みであり隣国の誼で少しだけ願ってやるんだ。
俺の前でなくとも、イギリスが誰かの前で、一秒でも長く笑ってられると良いなって。
そう、祈ってやるんだ。
なぁ、俺って本当にいい男だろ?
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